マザーグースという呼び名

始まりました、マザーグース紹介。(※カテゴリも編集しました)
まずはマザーグースという呼び名についてです。


マザー(Mother)=母、グース(Goose)=がちょうなので、日本語訳だと「がちょうおばさん」「がちょう母さん」になります。
なぜ伝承童謡をまとめてマザーグースと呼ぶのか。本によってはがちょうおばさんという実在の人物が作った歌だと書かれていることもありますが、その説は現在否定されています。
1697年にフランスの作家シャルル・ペローが、伝承童話集『過ぎし日の物語』という本を出版しました。その本の挿し絵には、お婆さんの絵と「わがお母さんガチョウの話」という文が入っていました。本がイギリスで英訳出版される際、その文は「マザーグースの物語(Mother Goose's Tales)」と訳されました。この親しみやすい文句はその後、本のタイトルにも取って代わります。さらには1780年、イギリスで新しく出版された童謡集に『マザーグースのメロディ』というタイトルとして利用されました。このことでマザーグースの呼称はすっかり定着し、やがて現在のように伝承童謡そのものを指す言葉として使われるようになったそうです。


という訳で、実在しなかったと思われるがちょうおばさん。
しかし「がちょうおばさん」という人物について歌ったマザーグースも存在します。それは『オールド・マザーグース』という歌です。ちょっと長いですが、全文を紹介。



”Old Mother Goose” (『オールド・マザーグース』)


Old Mother Goose, 
When she wanted to wander,
Would ride through the air
On a very fine gander.

(がちょうおばさん 散歩したいとき
 素敵なガチョウで 空をひとっとび)


Mother Goose had a house,
'Twas built in a wood,
Where an owl at the door
For sentinel stood.

(がちょうおばさん 森に家がある
 うちの玄関 フクロウが見張り番)


She had a son Jack,
A plain-looking lad,
He was not very good,
Nor yet very bad.

(おばさんの息子 ジャックは地味な子
 とりわけよくない わるくもない)
 

She sent him to market,
A live goose he bought;
See, mother, says he,
I have not been for nought.

(お使い頼まれ ガチョウを買う息子
 どうだい母さん 役立たずじゃないだろう?)


Jack's goose and her gander
Grew very fond;
They'd both eat together,
Or swim in the pond.

(ジャックのガチョウと母のガチョウ いつしかとても仲良くなった
 餌を食むとき泳ぐとき いつでも一緒で離れなかった)


Jack found one fine morning,
As I have been told,
His goose had laid him
An egg of pure gold.

(晴れた日の朝 ジャックは見つけた
 ガチョウが産んだ 金の卵を)


Jack ran to his mother
The news for to tell,
She called him a good boy,
And said it was well.

(ジャックは母へ 知らせに行った
「あなたはいい子ね」と 母は褒めた)


Jack sold his gold egg,
To a merchant untrue,
Who cheated him out of
A half of his due.

(いかさま商人に卵を売った
 だまされジャックは半値で売った)


Then Jack went a-courting
A lady so gay,
As fair as the lily,
And sweet as the May.

(素敵な娘に ジャックは求婚
 百合のように麗しく 五月のように甘い女性)


The merchant and squire
Soon came at his back,
And began to belabour
The sides of poor Jack.

(いかさま商人とその従者 ジャックの背後に近づいて
 あわれなジャックの横腹を これでもかと殴り始めた)


Then old Mother Goose
That instant came in,
And turned her son Jack,
Into famed Harlequin.

(がちょうおばさん すぐさま駆けつけ
 名高きハーレクィンに ジャックを変えた)


She then with her wand
Touched the lady so fine,
And turned her at once
Into sweet Columbine.

(杖で触れると かわいい娘
 麗しコロンバインに変身さ)


The gold egg in the sea
Was thrown away then,
When an odd fish brought her
The egg back again.

(金の卵はどこへやら 投げ捨てられて海の中
 奇妙な魚が拾い上げ 無事おばさんに戻ってきた)


The merchant then vowed
The goose he would kill,
Resolving at once
His pockets to fill.

(商人は決めた ガチョウを殺すと
 自分の財布を満たそうと)


Jack's mother came in,
And caught the goose soon,
And mounting its back,
Flew up to the moon.

(ジャックの母さん駆けつけて ガチョウをすぐさま捕まえた
 そしてその背にまたがって 月に向かってひとっとび)


○○○


《語句》 Goose=ガチョウ(雌)、gander=ガチョウ(雄)、'Twas=It was、owl=フクロウ、plain‐looking=風采の上がらない、courting=求愛、belabour=攻撃する


1815年ごろに発行された呼び売り本『オールド・マザーグース、あるいは黄金の卵』にある長編詩です。マザーグースという呼称が広まったあと、それを題材にして作られた歌だと思われます。
この歌はがちょうおばさんというキャラクターの活躍する、ファンタジックな物語になっています。また、道化師「ハーレクィン」とその恋人「コロンバイン」も、西洋喜劇では定番の恋人同士の名前です。古いバージョンでは、悪い商人(merchant untrue)ではなく悪いユダヤ人(a rogue of Jew)となっていることもあります。差別的表現を避けるため、後世に変更されたようです。

英文で読むと分かりますが、英語の発音に韻を踏んだとてもテンポの良い歌です。マザーグースはもともと韻を楽しむもので、音楽がついていないものでもリズムよく読むことが出来ます。この辺りが日本語訳に直してしまう際の難しいところでして…ぜひとも英文にも目を通していただけたらと思います。



おまけでもうひとつ紹介。

Cackle,cackle,Mother Goose,  くわぁ、くわぁ、がちょうかあさん、
Have you any feathers loose?  抜けた羽はありますか?
Truly have I, pretty fellow,  ええありますとも、素敵なお方、
Half enough to fill a pillow.  枕に半分入るくらい。
Here are quills, take one or two,  羽毛もどうぞ、一、二枚、
And down to make a bed for you.  あなたのベッドに綿毛もいかが。


こちらの歌でも歌詞にマザーグースがキャラクターとして登場します。比較的新しい歌のようなので、この歌も『マザーグース』という呼称をもとにして作られたものなのでしょう。

がちょう母さん
あなたなら、どっち。


(参考文献:谷川俊太郎訳『マザー・グース』、和田誠訳『オフ・オフ・マザーグース』、平野敬一『マザーグースの唄』、藤野紀男『図説マザーグース』)
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[ 2013/06/23 22:06 ] マザーグース | TB(0) | CM(0)

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