我如古の化け猫女房

がねこねこ1

がねこねこ2
『我如古の猫伝説』 (佐喜真興英『南島説話』)


沖縄県の我如古村に独身の老人がおり、あるとき若く美しい女と結婚して子供も産まれた。
それから数年の間は平和に過ごしていたが、やがて物心ついた子供が妙なことを言い出した。
「うちの母ちゃんは変だよ。父ちゃんが畑に出て行った後、母ちゃんは猫になって天井でネズミを捕まえ、家の後ろの方に行ってしまうんだよ」
夫はそれを聞いて驚いた。すぐにザル一杯ずつの魚と御飯を用意し、「これを持って出て行け」と妻に申し渡した。妻はザルを頭に載せてさっさと出て行ったが、気になった夫は後を付けてみることにした。

彼女は長柵という畑の洞窟の中に入り、仲間らしき者と話し始めた。
「私は人間に子供を産んでやったのに追い出された。悔しくて仕方ない。是非あの爺を取り殺してやらねば」
「お前がそんなに力んでも人間は物知りだ。取り殺そうとするときに呪文を唱えられたら、お前はきっと震え上がってしまうだろう」
そう言って相手はこのような呪文を口にした。

我如古長柵の (ガニクナガサクヌ)
青泣き猫 (オーナチマヤ)
青泣きするな (オーナチスナヨ)
高泣きするな (タカナチスナヨ)
青泣きせば (オーナチシネー)
松の頂に (マチヌハナニ)
首くくりさげらるぞ (クビクンチサギラリンド)
南風吹かば (ヘーヌカヂヌフチネー)
北の松に (ニシヌマチネー)
コツン! (ガッパヤ)
北風吹かば (ニシヌカヂヌフチネー)
南松に (ヘーヌマチニ)
コツン!! (ガッパヤドー)
嗚呼オトロシヤ (ハーウトルシヤヌンドー)

これを聞いた夫は喜んで家に帰った。その夕方、妻だった猫が家の前に来て、夫を取り殺そうと不気味な声で鳴いた。しかし夫が例の呪文を唱えると猫は何もせずに立ち去った。その後も何度か現れたものの毎度追い返され、ついにどうする事も出来なかったという。



沖縄県に伝わる民話です。「また猫の話かよ」とか言わない。


我如古の化け猫伝説には別のパターンもあって、こちらでは一人暮らしの婦人が飼っていた猫の話になっています。可愛がっていた猫が人間に化けて婦人を誑かし、村人たちが退治しようとするも敵いません。そこで僧侶に助けを求めたところ、先程の呪文を唱えて猫を洞窟に閉じ込めたというのです。


以上の話を由来として、猫が不気味な声で鳴いたらこの呪文を唱えるべきだと言い伝えられています。
他にも沖縄では猫にまつわる俗信が色々あり、

・猫の交尾を見ると禿頭になる。
・猫は只で貰ってはいけない。銭六厘と交換する。
・猫が死んだら、銭を添えた屍を木にかけておかないと喘息を病む。
・猫は十三年家で飼ってはいけない。化けて人に害をなす。
・子供が夜鳴きするとき「猫だぞ」と言っておどすと、化け猫が来て噛み殺してしまう。
・猫が非常に鳴き叫ぶ時は火事がある。
・猫を半殺しにすると必ず噛み殺される。
・夜に猫を呼ぶと幽霊が出る。
・死人の上を猫が飛び越えるとその屍は腐らなくなる。
 (『山原の土俗』より)

…などなど。
古い風習ですが、化け猫にならないよう猫の死骸は木に吊るすというのも有名です。
沖縄において猫は害をなすイメージが強かったのかもしれません。



(参考:島袋源七『山原の土俗(付、南島説話)』、崎原恒新『琉球の死後の世界』、今野円輔『日本怪談集妖怪篇』)

関連記事

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://snarkmori.blog.fc2.com/tb.php/56-91e98ac0