紫女

紫女

『紫女(むらさきおんな)』

日本の妖怪。井原西鶴『西鶴諸国ばなし』に登場する、紫の着物をまとった美女。
男性を誘惑し、命を奪うこともあるという。



『西鶴諸国ばなし』巻の三より 「紫女-筑前の国博多にありし事」

○○○

筑前の国(福岡県)に伊織という男がいた。
伊織は妻も持たず、出家したような心持で小さな家に暮らしていた。

ある日 彼の住まいに若い女が訪ねてきて、窓の外から「伊織さま」と呼びかける。
女は紫色で揃えた着物を身につけ、解き散らした髪を金紙で一括りにしていた。
その姿は夢のように美しく、伊織は思わず見とれてしまう。
女は着物の袖から羽子板を取り出し、一人で羽根突きを始めた。
一人羽根突きのことを『嫁突き』というので、伊織が「それは嫁突きか」と尋ねたところ
女は「夫も持たぬ身の私を『嫁』などと、そんな浮名を立てるなんて」
と戸を押し開け、家の中へ入り込んできた。
女は「誰であろうと触ったら、つねりますよ」
と言いながらもしどけなく着崩れており、後ろ帯もほどけ、紅色の腰巻がほのかに見えた。
「枕というものが欲しいわ。それがないなら、情けのある人の膝でも借りたいものです。
誰も見る人はいません。今鳴っている鐘は九つだから、夜も深いでしょう」
と女は目を細めて言う。
伊織はもはや拒むことも出来ず、相手が誰かも聞かぬまま情を交わした。
朝になると女は出て行き、伊織は次の夜が来るのを待ち望んだ。

そんな契りを交わすようになって二十日も経たぬ間に、段々伊織は痩せていった。
かねて世話になっている医者は彼の脈を取り、腎虚(過度の性的消耗による衰弱)だと判断した。
「あなたの命はもう長くない。さては隠し女でもいるのか」と問い詰められ、伊織は女の事を打ち明ける。
それを聞いた医者は「これぞ世に言う『紫女』という者だろう」と言う。
医者いわく、紫女は人の血を吸い命を奪うこともある。
助かりたければその女を斬るしかないという。
「いかにも、見知らぬ美女が毎晩通ってくるのは確かに恐ろしい」と伊織も考えを改めた。
油断せず待っているところに、女がやって来た。
「これほどの愛情を心変わりなさって、私を斬ろうだなんてうらめしい」
袖を顔に押し当て近寄ってくるのを、抜き打ちに斬りつける。
消えようとする女を追っていくと、山奥の洞穴に入っていった。

その後も、女は伊織を気にして姿を現した。
国中の修行者を集めて弔いをしたところ、女の姿は消え、伊織の命も助かったという。



謎の美女、紫女さんでした。
『西鶴諸国ばなし』は、このような不可思議かつ色っぽい話が多いのです。



【参考】
 『日本古典文学全集67 井原西鶴集②』、『西鶴が語る江戸のミステリー 西鶴怪談奇談集』
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はじめまして

紫女さんの妖艶できれいな姿に
思わず見惚れちゃいますね

伏せた目も組んでる足もどこか
色気を漂わせていて誘惑しているんでしょうね
[ 2016/04/06 10:56 ] [ 編集 ]

Re: タイトルなし

ありがとうございます!

「妖艶できれい」とのコメント、とても嬉しいです。
話の中でも 相当なお色気美女として説明されているだけに
色っぽく描くのに苦労いたしました…!!
[ 2016/04/08 18:23 ] [ 編集 ]

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