火事幽霊

火事幽霊

明治三十七、八年の日露戦争の頃、沖縄県渡久地村での話である。

ある酒飲みの男が友人達と飲みに行き、彼らと別れた後も一人で飲み続けた。午前二時ごろ、酔っ払った男が人気のない道を歩いていると、二、三十メートル先を女が一人歩いている。男が足を速めると女も足を速め、止まると女も止まる。男は気味が悪くなり、女から離れようと後ろを向いて反対側へ歩き出した。しばらくして立ち止まり、後ろを振り向くと女はピッタリと後を付いてきていた。男は恐怖に震えながらも、必死の思いで顔を覗き込もうとした。しかしそのたび女は反対を向いてしまい、後ろ姿しか見ることができない。女の後頭部は、炭火のように真っ赤だった。
男は慌てて逃げ出し、すぐ近くの家の門に飛び込んだ。後ろを振り返ると、女の着物は火が付いたように赤くなった。同時に何か焦げ臭い匂いがして、サアッと嵐が吹き抜けるような音が聞こえた。女は物凄い速さで村事務所の方向へと走りだし、すぐさま近くの井戸端辺りで消えてしまった。男は気を失ったが、その家の人が彼を自宅へ送り届けてくれた。

次の日、男が目を覚ますと「村事務所が丸焼けになって村中大騒ぎをしたのに、あんたはいくら起こしてもおきなかった」と家の者が言った。
男が村人達にこの話をすると、「火事幽霊というものもいるのか」と不思議がったという。



(参考:佐久田繁『霊界からの使者』月間沖縄社)



真っ赤な後頭部アピールの火事幽霊さんです。どんな顔だったのでしょう。


小原猛著『琉球怪談百絵巻-不思議な子どもたち』にも、火事が起こる前に現れるマジムン(化け物)が紹介されています。口の裂けた、全員同じ顔の少年達が、家に来て「はぶりか」という謎の言葉を発する。少年達は赤いわら人形を持って走り回り、その近所で火事が起こるという話でした。

火事の予兆として現れるものの怪談は少なくありませんが、火事を知らせているのか、はたまた火事を起こしているのか。
どちらにしても不気味なものですが、後者だと…より恐ろしいですね。
関連記事

コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://snarkmori.blog.fc2.com/tb.php/166-ee6ed347