隙間の怪・おまけ漫画①

「隙間の怪」についてのおまけ漫画。
隙間女について、リーマンが居酒屋でぐだぐだ喋ってるだけ。この漫画の続きっぽい。


隙間漫画1

続き出来ました → 

隙間の怪

「隙間」というものは不思議なものだ。

隙間の怪

大きく開いていても、ぴったり閉じていても気にならない。それなのに、ほんの少しだけ隙間があると、そこに「何か」入れそうだという気持ちになる。その小さな空間に、何か納めなくてはいけないような。何かの為に、あるような。何とはなく、落ち着かないような。
ほんのわずかに空いた隙間、奥の方はよく見えない。見えないからこそ、その奥が気になる。

その奥を覗いて、そこに何かがいるかもしれない。
その奥を覗いて、向こうからも誰か覗いてるかもしれない。


「隙間」というものは不思議なものだ。





有名な都市伝説に、「隙間女」(あるいは「壁女」)の話がある。

一人暮らしの女性が、ある日家の中で妙な視線を感じる。部屋には自分一人だけのはずなのに、誰かが見ているような気がしてならない。彼女は気の所為だろうと自分に言い聞かせたが、何日たってもその気配はなくならなかった。我慢できなくなった彼女は家の中を徹底的に捜索する。するとタンスと壁の間、たった数センチの空間に髪の長い女が立っていた。

さらに別のバージョンとして、

後輩が仕事場に来ないので家を訪ねてみた。直接会って理由を聞くと「彼女が行くなって言うんです」と答える。その彼女はどこにいるのか質問すると、彼は台所を指し示した。そこで台所を探してみると、冷蔵庫と壁の隙間に女が立っていた。

という話もある。その他、女は赤いワンピース姿をしているとか、異次元に連れ去られるというバージョンも存在する。隙間の大きさも数ミリから数センチと細かな違いがあるが、とはいえ「隙間」をテーマにした怪談といえばやはり隙間女が最も有名だろう。


○○○


隙間女を説明する際に、よく引き合いに出される話がある。江戸時代に書かれた『耳嚢』「房斎新宅怪談の事」という話である。

房斎という菓子屋が新居に引っ越したところ、二階の部屋の戸がどうもおかしい。召使が開けようとするが何故か半分しか開かない。無理に強く引っ張ると、その乱暴な音を聞きつけて主人がやってきた。「何故そんなに手荒くするのか、壊れてしまうだろう」と主人が手を掛けると滞ることなく戸は開いた。しかしその後、他の召使が閉じる際にはまた戸が動かずに無理やり押し込んだ。
次の日再び開かなくなったので、なんとか開けようと強く戸を押した。すると戸袋の隙間から、一人の女が現れ組み付いてきた。慌てて押し返すと女の姿は消えてしまった。また次の日には、その女の着ていた単物が軒口に引っ掛けてある。しかし取り除こうとすると消えうせた。このような怪異があるから、前の持ち主もこの家を譲ったのかもしれない。



江戸時代から存在する「隙間」と「女」の怪談としてとても興味深い話だ。戸袋は引き戸を収納する場所であり、大したスペースも無い。まさに隙間程度の空間なのだ。そんな隙間に隠れ住む女とは不気味な存在である。今まで戸が開かなかったのはこの女が居たからだ、と気づいた瞬間に何ともいえない薄気味悪さを感じる。


隙間に納まる女の話ならば、『古今百物語評判』の「こだま并彭侯と云ふ獣付狄仁傑の事」という話にも紹介されている。
草木に精が宿るという話において、牡丹を愛する男の元に美女がやってくる。彼はこの美女をとても気に入ったが、実はこの美女は牡丹の精であった。あるとき正体を隠しきれなくなった女は、平たい蜘蛛のようになって壁の狭間に隠れてしまう。彼女は男に全てを打ち明けるとそのまま消えてしまった。

房斎の話では女が家に住み付いていたのに対し、この話では女は男から身を隠そうとして隙間に入る。もしかすると房斎の場合も、彼を目当てに隠れ住んだ女の仕業だったのかもしれない。現代の隙間女にも隙間に入る理由があるのかは気になるところである。家が目当てなのか住人が目当てなのかによって、その怖さのベクトルはかなり変わってくるのではないだろうか。


○○○


最後にもう一つ、今度は隙間を通る「男」の話がある。『遠野物語』の第七十九話だ。

田尻家には長蔵という奉公人がいた。ある日長蔵は夜遊びに出かけ、まだ宵のうちに帰ってきた。門から入ると家の前に人影が見える。懐に手を入れ、袖を垂らしているのが分かったが顔はよく見えない。さては妻のところに来たヨバヒト(夜這い人)かと思い足早に近寄った。しかし相手は裏に逃げるのではなくそのまま玄関の方に進んでいく。腹立たしく思った長蔵がなおも近づくと、男は懐手をしたまま後退りする。そして三寸(9センチ程度)ほどしか開いていない玄関の戸の隙間からすっと中へ入ってしまった。しかしこの時、なぜか長蔵は不思議に思わず戸の隙間に手を入れて中を探った。すると戸の内側にはさらに障子がぴたりと閉じていた。そこでようやく恐怖を感じた長蔵は少し後退りつつ上を見た。すると玄関の壁の上の方に、先ほどの男がひたと貼り付いてこちらを見下ろしていた。長蔵に届きそうなほど首を低く垂れ、その目の玉は飛び出していた。長蔵はとても恐ろしい思いをしたが、特に何かの前兆でもないらしくその後何事も無かったという。




小さな隙間を通って家の中に入ってしまった男が、なぜか外の壁にくっ付いていたという怪談。一見「隙間女」とはさほど関係なさそうだが、「自宅」に現れ「隙間」を通り「壁」に張り付くという三つの点で共通している。そしてまたも、その場に現れた理由は分からない。隙間を通り中に入ってから再び外の壁に張り付くところも不可解である。


これらの話を聞く限り、隙間の怪談はどうも謎が多いようだ。何の脈絡もなく家に女が住み着いているのが隙間女の恐ろしさであり、それは房斎の話でも同じである。女は何者だろうか。何故そこにいるのだろうか。牡丹の精は、正体こそはっきりしているものの、美女が平たい姿になり隙間に納まってから消えてしまう理由は分からない。遠野物語においては、もはや分かっている事がほとんどないという始末である。

何故隙間に入るのか。何故隙間を通るのか。どの話も理由ははっきりしないままだ。
この不可解さこそが、隙間にまつわる怪談の恐ろしいところなのかもしれない。





(主な参考文献:宇佐和通『都市伝説の真実』、松山ひろし『真夜中の都市伝説~壁女』、湯本豪一『江戸の妖怪絵巻』、柳田國男『遠野物語』、根岸鎮衛『耳嚢』)

男の子って何でできてるの?〈マザー・グース〉

”What are little boys made of?”
  What are little boys made of?
  What are little boys made of?
  Frogs and snails,
  And puppy-dog's tails,
  That's what little boys are made of.

  What are little girls made of?
  What are little girls made of?
  Sugar and spice,
  And all that's nice,
  That's what little girls are made of.


『男の子って何でできてるの?』
  男の子って何でできてるの?
  男の子って何でできてるの?
  カエルとカタツムリ
  そして子犬の尻尾
  そういうものでできてるよ

  女の子って何でできてるの?
  女の子って何でできてるの?
  砂糖とスパイス
  そして素敵なものすべて
  そういうものでできてるよ

おんなのこ、おとこのこ
英国伝承童謡マザー・グースの中でもかなり有名な歌ではないでしょうか。
男の子と女の子の違いを歌ったものですが、その分析は女子目線に偏っています。女の子はシュガー&スパイス。男の子は…。うん…。
国が違っても男子と女子の関係は変わりませんね。

ちなみにfrogs and snails(カエルとカタツムリ)はsnips and snails(ぼろきれとかたつむり)やslugs and snails(ナメクジとカタツムリ)の場合もあります。こっちの方がsugar and spiceと対比させてる感じですね。どちらにしても、男子の扱いは酷いままですが…。
[ 2013/04/16 19:51 ] マザーグース | TB(0) | CM(0)

ウィー・ウィリー・ウィンキー

ウィリー・ウィンキー

『Wee Willie Winkie』
 Wee Willie Winkie runs through the town,
 Upsatirs and downstairs in his night-gown,
 Rapping at the window, crying through the lock,
 Are the children all in bed, for now it's eight o'clock?
 

『ウィー・ウィリー・ウィンキー』
 ちっちゃなウィリー・ウィンキー 街の中を駆け回る
 寝巻き姿で階段を 上って下りての繰り返し
 窓をコンコン叩いては 鍵穴越しに叫んでる
 「子供たち寝たかい? 今はもう8時だよ」
 


マザー・グース(英国伝承童謡)のひとつ。夜、眠る時間になると現れるウィリー・ウィンキーです。


"wee(ウィー)"は小さいという意味。"Willie Winkie(ウィリーウィンキー)"は眠りを擬人化した「眠りの精」のことだといいます。
なかなか寝ようとしない子供に歌ってきかせる子守唄のようなマザーグースです。
原作といわれる古いスコットランド童謡では、本来もっと長い歌をしていました。ウィキペディアに長いバージョンが載っていますが、結構乱暴な感じのする歌です。また、「今はもう8時だよ」も昔は10時でした。子供が寝る時間にしても、8時は結構早いですね。


眠りを誘う存在としては、『サンドマン』『ダストマン』と呼ばれる場合もあります。ドイツ語だとザントマン。意味はそのまま「砂男」です。ウィリー・ウィンキーが寝巻き姿の子供で想像されるのに対し、サンドマンは姿の見えない妖精、もしくは砂の入った袋を持つ老人の姿をしているといいます。この砂を振りかけられて目に入ると、目を開けていられなくなるほど眠くなるという睡魔です。ドイツでは、子供が眠らないと「ザントマンがやってくるぞ」といって脅かすそうで。確かに砂を掛けてくる老人が来たら怖いですね…催眠効果を持つ砂かけ婆みたいな感じで。
ホフマンの短編『砂男』はこのサンドマンをモチーフにした小説です。『砂男』でのサンドマンは、砂をかけて眠らせるだけでなく、眠らない子供の目を奪い取る恐ろしい存在となっています。小川未明の童話『眠い町』にも、何でも眠らせる砂を持つ老人が出てきました。この話の場合、眠らせるのは生き物だけに限らず無機物だろうとお構いなしに眠らせていましたが。

ところで、実はドラえもんにも『砂男式さいみん機』という道具が出てくるそうです。
結構有名だなぁ、サンドマン。



(主な参考文献:鳥山淳子『映画の中のマザー・グース』、藤野紀男『図説マザーグース』、谷川俊太郎『マザー・グース1』)
[ 2013/04/14 11:31 ] マザーグース | TB(0) | CM(0)

琉球怪談近況

三月末に、『琉球怪談・妖怪大集合 ほんとうにあった怖い話朗読会』というイベントを覗いてきました。

『不思議な子どもたち~琉球怪談百絵巻』の出版記念企画だそうです。といっても怪談朗読は二話ぐらい?と少なめでした。それにプラスして、琉球新報の子供向け新聞『りゅうPON』で連載されている妖怪紹介コーナーが出張参加。沖縄の妖怪を、イラストのスライドショー付きで紹介するというものです。なので観客も子供が多かったのですが、子供向けにしては妖怪イラストが…本気で怖い。あれっ…これほんとに子供向け新聞で連載してるの。ちょっと怖すぎじゃないの。

スライドショーでの説明だけでなく、『りゅうPON』の切り抜きも展示されていたのが嬉しかったです。妖怪紹介マニアックでたまらない。早くまとめられて本にならないかなぁ。…多分まだまだ先のことだと思いますが。
切り抜きを読んでたら、隣に居た小学生二人が「あー仲西ヘーイだー」「仲西ー」「この橋ほんとにあるんだぜー」「ほんと?」「へーいって叫ぼうか!」「えーっ、だめだよー!」というような会話をしていて和みました。


しかし小学生の口から仲西ヘーイという言葉が飛び出す時代…、琉球怪談、来てますね。


○○○


さらに、本屋をうろうろしていたら『沖縄マジムン図鑑』という本を発見。購入しました。
この手の本が沖縄県内の地方出版社じゃないのは珍しいなあ。

沖縄の妖怪と神様をずらっと紹介した本です。妖怪資料というよりは入門本の類でしょうか。わかりやすく絵付きです。アカマターの絵がホスト風だったりと、コメディタッチのものが多め。しかし「どんな姿?」という解説はちょっとふざけすぎじゃないだろうか…。ユーリーは「長い髪で顔を覆い小顔効果を狙っている」とか、ウチャタイマグラーが「(質のいい着物を着ていて)ブランド好きのマジムン」とか…いいのか。かと思えばコラムは結構真面目だったりします。あと、この本でもジュリグヮーマジムンがジュリ馬姿でした。ゆいゆい!


有名どころの妖怪は大体載ってる感じでした。個人的に、神様紹介をまとめてあるのが良かったです。

あっ、でも仲西が載ってない!仲西!
沖縄妖怪を紹介するなら、仲西は是非とも入れてほしかった…!神隠し系はシチとかぶるからでしょうか、残念です。片足ピンザも入ってるのになぁ。




『シチマジムン』:沖縄の妖怪。シチ、またはシキ、ヒチ、シッキーともいう。真っ黒な姿で立ち塞がって、山路の通行を邪魔する。形の見えないぼんやりした雲か風のようなものといわれ、板戸の節穴からでも出入りできる。人を連れ出して何日も迷わし、時には墓穴に閉じ込めることもある。

『アカマター』:アカマターとは斑蛇(マダラヘビ)のことであり、ここでいうのはアカマターの妖怪を意味する。美青年に化けて女性を誘惑し、命を奪ったり子を孕ませたりする。


その他の妖怪は以前の記事で説明していますので、ご参考までに。
[ 2013/04/12 12:58 ] 妖怪・怪談メモ | TB(0) | CM(0)

「仲西」の出る潮渡橋に行ってみた

先日紹介した、沖縄の妖怪「仲西」


という訳で「仲西」の出るという潮渡橋に行ってみました。
潮渡橋はリッチモンドホテル那覇久茂地のすぐ近く、道路上にかかる橋です。モノレール美栄橋駅から少し歩いた所。
(昔と今とで潮渡橋の場所が変わっている可能性は放置です、ご容赦下さい。仲西が出るのは潮渡橋『付近』らしいから…大丈夫、きっと大体あってる!多分。)




ここがその潮渡橋。
潮渡橋

仲西ヘーイ

仲西

『ナカニシ(仲西)』

沖縄の妖怪。仲西とは人の姓である。
晩方、那覇と泊の間にある塩田潟原の潮渡橋付近で「仲西ヘーイ」と呼ぶと出てくるという。



説明これだけですか、と聞きたくなるような謎の妖怪・仲西。



他にもこんな民話があります。

モーイ親方という人物が、夜中の墓で夫の骨を洗骨する女と出会った。(沖縄では昔、土葬・風葬したあとから骨を洗って墓に納めるという慣習があった)。モーイは洗骨を手伝い、法事のために金も与えた。
するとそれ以後、モーイが夜道を歩くと前方に提灯の明かりが付いて足元を照らすようになった。姿は見えないが声をかけると返事をし、洗骨のお礼だと言った。モーイは納得したが、しかしそういつもは必要ないと返した。それなら用事のあるときは、三度「仲西ヘーイ」と声を掛けてくれればいつでも現れると約束した。
ある日、モーイは火急の連絡で山原へ行かねばならなくなった。モーイが「仲西ヘーイ」と呼びかけると、牛のような姿が現れ、モーイを乗せて山原へ向かった。モーイは驚くべき速さで山原へ辿り着き、連絡を届ける事ができたという。



提灯、牛、と姿の変わる不可思議な存在・仲西。イラストのデザインに角が生えてるのはそういうことです。
ちなみに仲西を呼ぶと、物迷い(神隠し)に会ってしまうとも言われています。親しみやすいんだか恐ろしいんだか。


(参考:金城朝永『琉球妖怪変化種目』、崎原恒新『琉球の死後の世界』)



※追記 「仲西」の出る潮渡橋に行ってみた。

※さらに追記 仲西ヘーイの説明を補足しました。

※さらにさらに追記 仲西についての注意とか。(漫画)